2025/12/16
使えない筋肉~スポーツと筋トレ~
スポーツでより活躍する、怪我のリスクを下げるために、筋トレは重要です。
バスケットボールやバレーボールでは、下半身の筋力がより高いほど、より速く・高くジャンプすることができ、そのことはバスケのリバウンドやバレーのブロックなどで有利に働きます。
ラグビーやサッカーでより体幹が強ければ、それだけ当たりに強く競技レベルが上がるでしょう。
また、股関節・膝関節周辺の筋量が多ければ、膝の故障リスクを低減することができます。
このようにスポーツをする上で、レジスタンストレーニング(いわゆる筋トレ)はとても重要なものです。
しかし、よく「使えない筋肉」という言葉を目にしたり、聞いたりすることがあります。
反対に、SNSなどで物珍しいトレーニング動画を上げて、「これはスポーツのためのトレーニングで無駄な筋肉を増やしているわけではない」という趣旨の意見も何度も見たことがあります。
このような「使えない筋肉」や筋肉を増やさない「スポーツのための特殊な筋トレ」というものは存在するのでしょうか。
個人的には、「使えない筋肉」や「スポーツのための特殊な筋トレ」というものは「ない」と考えています。
【使えない筋肉】
最も良く目にする意見が、ボディビルダーのような筋肉は使えない筋肉、という意見ですが、そもそも「使えない筋肉」とは「どんな場面」で使えない筋肉と言われているのでしょうか。
シンプルに重たい荷物を持ち上げる、長い距離を歩いても疲れにくい、という観点だとボディボルダーのような筋肉は「使える筋肉」です。
ボディビルダーのようないわゆる「マッチョ」の筋肉が使えないと言われる場面は
①マッチョだから引越や荷物の配送の仕事、工事現場などのときに活躍すると思ったのに、すぐに疲れて期待外れだった
②筋肉があるのに運動音痴でスポーツが下手だった
③細マッチョの人と懸垂対決をしたら細マッチョの人の方が何回も多くできていた
というような場面ではないかと思います。(ほかにもたくさんあると思いますが)
①の場面は、当然なのです。
重たいものを運ぶ=筋肉があった方が良い、というイメージが一般的にあるため、①のような状況が生まれるのだと思いますし、重たいものを運ぶなら筋肉は多い方が良いのは事実ですが、引越業や配送業、工事現場では、いかに楽に動作するかが大事で、そうしなければ、重たい荷物などを運び続けることはできません。
それに対してマッチョは、いかに狙った筋肉だけに負荷を与えるか、というトレーニングを日々行っており、物理的に楽に重量物を動かすということは考えていません。
例えば、引越業者には、重たい荷物をできるだけ楽に持ち上げる、運ぶというアイテムやノウハウがあるため、細身の女性でも重たい荷物を運んでいます。
そのため、そういった考え方やノウハウのない力任せに荷物を持つマッチョではいきなり現場で活躍できないのは当然のことで、使えない筋肉がついているわけではありません。
②の場面も当然のことです。例えば、筋トレだけをしていたらサッカーでプロに行ける実力がついた、などありえません。
そのスポーツの練習をしなければ、そのスポーツは上手くならないのですから、これも使えない筋肉がついているのではなく、単純にそのスポーツの練習をしていない、その動作の練習をしていないからできないというだけなのです。
③の場面ではどうでしょうか。マッチョは懸垂もおそらく大半の人が行っていますので、①や②と違い、やったことがない・上手くやる方法がわからないということはありません。
しかし、この場面でもやはり使えない筋肉なのではなく、筋肉は大きいし、筋力も高いが、筋持久力がない、ということになります。
ほとんどのマッチョは、筋持久力を伸ばすトレーニングは行っていません。
陸上で例えると分かりやすいですが、100m走の選手とフルマラソンの選手が、フルマラソンで勝負をしたらどちらの選手が勝つでしょうか。100m走の選手は結構筋肉があります。一方でフルマラソンの選手は、長距離を走るため、ほとんど筋肉はありません。
そして、この勝負では間違いなくマラソンの選手が勝ちますが、だからといって100m走の選手に「あなたの筋肉は使えない筋肉ですね」とは誰も言わないはずです。
以上のように「使えない筋肉」というものはなく、どんな目的で筋トレをしているのか、また筋トレのほかに練習している動作があるのか、といったことが大事になりますが、一般的なイメージとして、筋肉があれば動けるという漠然としたイメージから、ボディビルダーのような筋肉は「使えない筋肉」と呼ばれるようになったのではないかと思います。
【スポーツのための特殊な筋トレ】
これについては、「ない」と考えている、とお話ししましたが、ボディビルダーとスポーツ選手の筋トレは確かに異なります。
ボディビルダーでは鍛えたい筋肉を鍛えることができれば、どんなトレーニング方法でも構いません。
しかし、スポーツのために筋トレをするなら、できる限りそのスポーツの中で行われる動作に近い種目の方が良いのです。
例えば、ジャンプをする競技であれば、マシンのレッグプレスよりもスクワットの方が良いということになります。
ジャンプ動作中は、立った状態で、体幹を安定させ、全身のバランスを取りながら、力を発揮します。
スクワットは、その動作のスピードを除いて、ジャンプ動作にかなり近い状態でトレーニングができますが、レッグプレスでは、座った状態で上半身をマシンに預けるため、体幹を安定させたり、バランスをとる必要がありません。
このようにスポーツをするなら競技の中で行われる動作に近い動作でトレーニングをした方がより良いため、スポーツ選手がトレーニングをする際にはボディビルダーのトレーニングを真似すれば良いわけではありません。(もちろんすべての筋肉を競技動作に近い状態で十分に鍛えられるわけではないため、マシンを使ったトレーニングも有効です。)
ただこのことは、あくまで身体を鍛える上でたくさんある種目の中からより競技動作に近い種目を選択するということであり、「スポーツのための特殊な筋トレがある」ということではありませんし、スポーツ選手であっても筋トレの目的は、筋力を伸ばす・筋肉を増やすことにほかなりません。
もちろんスポーツによってそれぞれ理想的な筋力のバランスはあります。バドミントンの選手とラグビーの選手の身体は全く異なりますが、どちらが良い・悪い、優れている・劣っているではなく、それぞれその競技を行うために理想的な身体になっています。
もしも筋トレをしているのに、スポーツのためであって筋力の増も筋肥大も狙っていないのだとしたら、手段が間違っています。
瞬発力や敏捷性を高めるのであれば、その目的に合ったトレーニング方法がありますので、そちらを選択するべきですし、様々な要素をまとめて狙ってトレーニングをする、ということは、少なくとも現代では一般的ではないと思います。
日々、たくさんの人が現場で試行錯誤をしていますので、将来的にはそういったトレーニング方法も確立されるかもしれません。
しかし、現時点では、安全性も考慮すると、筋力や筋肥大はレジスタンストレーニング(筋トレ)、伸ばした筋力を短い時間で発揮する、正しく発揮するため、瞬発力・敏捷性をプライオメトリックスやスピードトレーニング、フットワーク、そして最終的に競技練習の中でその競技で使いこなせるよう落とし込んでいく、と分業するのが一般的ではないかと思います。
以上のように「使えない筋肉」や「スポーツのための特殊な筋トレ」は、ないと考えています。
これから身体を鍛えたい、と思ったときには、なんのために鍛えたいのかというところから、あなたの目的に合った種目や方法で鍛えるとより効果を実感できると思います。
また、途中で目的が変わっても、そのときにトレーニング方法を変更すれば大丈夫です。プロのアスリートレベルを目指しているわけでなければ、十中八九、それまでにつけた筋力や筋肉が無駄になったり、邪魔になることはないはずです。
ただ運動したい、日々の健康のため、ボディメイクのため、スポーツのため、などなどなど人によって身体を鍛える目的はそれぞれ異なりますが、「使えない筋肉」はありません。
あなたの目的に合ったトレーニングを行っているのなら、それによって得られた筋肉は紛れもなくあなたにとって「使える筋肉」です。
自信を持ってトレーニングを続けましょう!!



